普段の会議では、それなりに話せる。
気心の知れた同僚の前なら、自分の意見も言える。
ところが、社長や役員が参加した途端に緊張する。
大切なプレゼンになると、いつものように言葉が出てこない。
「話せるときもある。でも、話せないときもある」
この差に悩んでいませんか。
先日、スピーチ革命塾の受講生の方とお話ししていたときにも、
「話せるときもあるんですが、緊張して話せないときもあるんです。再現性がないんですよね」
というお話がありました。
そこで私は、
「では、その再現性をつくっていきましょう」
とお伝えしました。
では、人前で安定して話せる「再現性」とは、どうすれば身につくのでしょうか。
私は、ただ場数を踏むだけでは足りないと考えています。
大切なのは、
「誰が相手でも、どんな場面でも、自分が戻れる基準を持つこと」
です。
目次
■なぜ「話せるとき」と「話せないとき」があるのか
「昨日はうまく話せたのに、今日はダメだった」
「この人の前では話せるのに、あの人の前では緊張してしまう」
人前で話すことに悩んでいる方から、こうした話を聞くことがあります。
不思議ですよね。
同じ自分です。
昨日まで持っていた話す能力が、突然なくなったわけではありません。
知識が消えたわけでもない。
それなのに、相手や状況が変わるだけで、まるで別人のように話せなくなることがあります。
なぜでしょうか。
私はその大きな違いの一つが、
「話すときの心の状態」
にあると考えています。
■場数を踏むだけでは「再現性」が生まれない理由
人前で安定して話せるようになるために、
「とにかく場数を踏めばいい」
「何度も経験すれば、そのうち慣れる」
と言われることがあります。
もちろん、実践経験は大切です。
人前で話す経験を一度もしないまま、人前で話せるようになるのは難しいでしょう。
ただ、
「場数を踏むこと」と「どんな場面でも安定して話せること」は、まったく同じではありません。
慣れた場所、慣れた相手なら話せる。
でも、相手が変わった途端に話せなくなる。
人数が増えたら緊張する。
いつもの会議室なら大丈夫なのに、大きな会場では頭が真っ白になる。
評価される場面になると、急に自信がなくなる。
こうしたことは起こります。
つまり、
「この場所には慣れた」
「このメンバーには慣れた」
という経験だけでは、環境が変わったときに崩れてしまうことがあるのです。
■社長が一人入っただけで、なぜ話せなくなるのか
例えば、いつもの社内会議を想像してみてください。
普段は同僚たちと気軽に意見を交わしている。
自分の考えも普通に話せる。
ところが、その日の会議には社長が参加することになった。
社長が入ってきた瞬間、
「ちゃんとしたことを言わなきゃ」
「間違ったことを言ったらどうしよう」
「変なことを言って、評価を下げられたくない」
そんなことを考え始める。
そして、自分の番になると、いつものように言葉が出てこない。
でも、考えてみてください。
会議で話す経験は、これまで何度も積んできたはずです。
話す能力が、社長が入室した瞬間に消えたわけではありません。
変わったのは、
「誰に、どう見られているか」を意識したことで、話すときの心の在り方が変わったこと
ではないでしょうか。
それまで、
「自分の考えを伝えよう」
と思っていた。
ところが社長が来た瞬間、
「よく思われたい」
「できる人だと思われたい」
「間違えたくない」
へ心が動いていく。
すると、意識は伝える内容より、自分自身へ向かいます。
「ちゃんと話せているかな」
「変なことを言っていないかな」
「どう評価されているかな」
こうして、いつもならできていることまで難しくなってしまうのです。
■安定して話すための「心のフォーム」
では、相手や状況が変わっても、自分を見失わずに話すにはどうすればいいのでしょうか。
そこで私が大切にしているのが、
「心のフォーム」
です。
スポーツには、基本となるフォームがあります。
私は話し方にも、
「どんな心で相手の前に立つのか」
という土台が必要だと考えています。
心のフォームには、大きく二つあります。
一つは、
「自分に正直でいること」。
社長が目の前にいて緊張しているなら、
「今、自分は緊張しているな」
と認める。
無理に堂々とした人間を演じない。
立派なことを言おうとしすぎない。
今の自分が本当に思っていること、考えていることを、自分の言葉で伝える。
もう一つは、
「相手に心を込めて届けること」。
「社長からどう評価されるだろう」
ではなく、
「この会議のために、自分は何を伝えられるだろう」
「相手が判断するために、どんな情報を届ければいいだろう」
へ心を向ける。
つまり、
「自分に正直に、相手に心を込めて届ける」
これを、自分が話すときの基準にするのです。
■相手が変わっても「基準」は変えない
ここが、今回一番お伝えしたいところです。
同僚の前。
上司の前。
社長の前。
大勢の前。
初対面の人の前。
もちろん、相手によって言葉遣いや説明の仕方は変わります。
伝える内容も変わるでしょう。
でも、
「どんな心で話すか」という自分の基準まで変える必要はありません。
同僚の前では自然体なのに、社長の前になったら「立派な自分」を演じる。
友人には正直に話せるのに、人前に立った瞬間「失敗してはいけない自分」になる。
これでは、相手や状況が変わるたびに自分まで変わってしまいます。
だから、
「誰が相手でも、自分に正直に」
「どんな場面でも、相手に心を込めて」
という基準を持つ。
緊張して心が揺れたら、そこへ戻る。
私は、これが話し方の再現性をつくるうえで大切な土台だと考えています。
■「知っている」と「できる」はまったく違う
ただし、ここで注意してほしいことがあります。
「なるほど。自分に正直に、相手に心を込めればいいのか」
と理解した。
それだけで、明日からどんな場面でもできると思わないでください。
知ることと、できることは違います。
これはスポーツと同じです。
フォームを動画で見て理解したからといって、その瞬間から本番で同じ動きができるわけではありません。
繰り返し練習しますよね。
話すときの心のフォームも同じです。
知識として理解するだけではなく、
繰り返し使って、自分のものにしていく必要があります。
■日常会話こそ、最高のトレーニングになる
では、どこで練習すればいいのでしょうか。
教室だけではありません。
実は、毎日の生活の中に練習する機会はいくらでもあります。
同僚と話すとき。
家族と話すとき。
誰かにお願いするとき。
上司へ報告するとき。
LINEやメールへ返信するとき。
そんな何気ないコミュニケーションでも、
「自分に正直に、相手に心を込めて」
を意識してみてください。
例えば、
本当は分からないのに、できる人に見られたくて「分かりました」と言っていないか。
本当は困っているのに、弱く見られたくなくて何も言わずに抱え込んでいないか。
逆に、自分の言いたいことだけをぶつけて、相手の状況を見失っていないか。
自分の気持ちに正直でありながら、相手にも心を向ける。
人前に立つ本番だけで突然やろうとするのではなく、普段から使っていく。
日常そのものが、心のフォームを身につけるトレーニングになります。
■プレッシャーがかかる場面でこそ実践する
そして、もう一段階必要です。
日常でできるようになってきたら、
「少し緊張する場面」
でも使っていきます。
気楽に話せる家族にはできる。
仲のいい同僚にもできる。
でも、上司の前では使わない。
人前に立ったら忘れてしまう。
これでは、大切な場面で使える力にはなっていきません。
例えば、
上司への少し緊張する報告。
会議で自分の意見を伝える場面。
朝礼で話す機会。
人前で発表する場面。
そういうときこそ、絶好の実践機会です。
緊張したら、
「緊張しているな」
と、まず今の自分を認める。
そして、
「それでも、自分に正直に話そう」
「目の前の相手に、今できることを届けよう」
と、自分の基準へ戻る。
最初から完璧にできなくても構いません。
本番の中で何度も思い出し、戻ってくる。
この経験が重要なのです。
■本番後の「振り返り方」を変える
さらに、再現性をつくるうえで大切なのが、本番後の振り返りです。
あがり症に悩んでいる方は、本番が終わると、
「緊張してしまった」
「声が震えた」
「途中で言葉に詰まった」
「うまく話せなかった」
と、できなかったところだけを振り返りがちです。
でも、それだけを基準にすると、
「緊張した=失敗」
になってしまいます。
私は、別の基準でも振り返ってほしいと思っています。
「今日は、自分に正直に話せただろうか」
「よく見せることより、伝えることへ心を向けられただろうか」
「相手に心を込めて届けようとしただろうか」
「緊張したとき、自分の基準へ戻れただろうか」
もちろん、話し方そのものの改善点も振り返ります。
でも、それと同時に、
「どんな心で話せたのか」
も振り返る。
すると、緊張した本番からも、
「今日は緊張した。でも、途中から相手に意識を戻せた」
という成長を見つけられるようになります。
この振り返りを重ねることで、次の本番でも使える経験になっていきます。
■「正しい土台の上で、場数を踏む」
ここまで読むと、
「では、場数は必要ないのか」
と思う方もいるかもしれません。
そうではありません。
場数は必要です。
話し方の練習も必要です。
大切なのは、
ただ場数を踏むのではなく、「自分が戻る土台」を持って場数を踏むことです。
毎回、
「今日は緊張しなかった」
「今日は緊張した」
だけで終わらせない。
緊張しても、自分に正直に話す。
周囲の評価が気になっても、相手へ心を戻す。
うまくいかなかったら振り返り、また次の場面で使う。
これを繰り返す。
私は、
「心のフォーム × 実践」
この積み重ねが、話し方の再現性につながっていくと考えています。
■再現性とは「毎回緊張しないこと」ではない
そして最後に、一番大切なことをお伝えします。
「安定して話せる」
と聞くと、
どんな場面でも緊張しない。
いつでも堂々としている。
毎回100点のスピーチができる。
そんな状態を想像するかもしれません。
でも、私はそうではないと思っています。
人間ですから、心は揺れます。
相手が変われば緊張することもあります。
重要な場面なら、プレッシャーも感じます。
体調によっても違います。
だから、
「まったく揺れない自分」
を目指す必要はありません。
再現性とは、揺れないことではなく、揺れても自分の基準へ戻れること。
社長がいても。
大勢の前でも。
大切なプレゼンでも。
「今、緊張しているな」
と自分を認め、
「では、自分は何を届けるのか」
へ戻る。
また自分の見られ方が気になったら、もう一度戻る。
その「戻る力」を何度も実践して育てていく。
これが、私が考える、
「どんな場面でも安定して話せる人」
です。
■今日からできる一つの実践
今日から、話す場面で一つだけ試してみてください。
話す直前に、
「自分に正直に。相手に心を込めて。」
と、一度自分の中で確認する。
そして話し終わったら、
「緊張したか、しなかったか」
だけではなく、
「自分の基準に戻って話せたか」
を振り返る。
まずは日常会話からで構いません。
そして少しずつ、会議、報告、朝礼、プレゼンなど、プレッシャーがかかる場面でも使っていく。
そうやって、
「知っている心のフォーム」を、
「本番で使える心のフォーム」
へ変えていくのです。
今日のまとめ
・話せるときと話せないときがあるのは、能力だけではなく「話すときの心の状態」が変わっている場合がある
・場数や話し方の練習は大切だが、それだけでどんな場面でも安定して話せるとは限らない
・相手や状況が変わっても「自分に正直に、相手に心を込めて」という基準へ戻る
・心のフォームは、知識として知るだけではなく日常から繰り返し使う
・上司への報告や会議など、少しプレッシャーがかかる場面でも実践する
・本番後は「緊張したか」だけでなく「自分の基準に戻れたか」も振り返る
・安定して話せるとは、緊張しないことではなく「緊張しても戻れること」
あわせて読みたい
・「人前で緊張してうまく話せない原因は『心』にある|話し方の土台『心のフォーム』とは」
・「緊張する自分を変えようとするほど、なぜ話せなくなるのか|あがり症を克服する『自己一致』」
・「『どう見られるか』から『何を届けるか』へ|人前の緊張を変えるプレゼントマインド」
・「頭でわかっているだけでは、ほとんど役に立たない|実践だけが話し方も人生も変える理由」
「本番になると、いつもの自分が出せない」と悩んでいる方へ

普段なら話せる。
でも、上司や役員の前では緊張する。
会議では話せるのに、大切なプレゼンになると頭が真っ白になる。
そんな状態に悩んでいる方は、
「もっと場数を踏まなければ」
だけで終わらせず、
「自分は本番で、どんな心になっているのだろう」
という土台にも目を向けてみてください。
スピーチ革命塾では、
心のフォームを整える。
伝わる話し方を学ぶ。
そして、実際に人前で使ってみる。
この「心 × 話し方 × 実践」を大切にしています。
目指すのは、
「二度と緊張しない人」ではありません。
緊張しても、プレッシャーがかかっても、自分の基準へ戻り、自分の言葉で相手に届けられる人です。
「話せるときと話せないときの差を小さくしたい」
「仕事のどんな場面でも、安定して自分の力を発揮したい」
そんな方は、スピーチ革命塾の無料相談や体験教室にお気軽にお越しください。
ただ場数を増やすのではなく、
正しい土台の上で実践を重ね、本番でも使える力へ変えていきましょう。